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ペルシャ絨毯の通販サイト/ 数寄の絨毯 (すきのじゅうたん)
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PERSIAN CARPET
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Page Contents
絨毯とイスラーム
① イスラームとは
イスラームとは、アラブの預言者ムハンマド(ca.570-632)が610年に創唱した一神教で、「帰依/唯一の神アッラーフに絶対的に服従すること」を意味する。偶像崇拝や多神教的信仰を否定する「厳格な一神教」で、信者であるイスラーム教徒は「ムスリム」といい、「帰依する者」すなわち「絶対的に服従する者」を意味する。イスラームそのものが宗教の名であるため、イスラーム教というのは正確ではない。
かつては欧米でマホメット教、中国で清真教、回回教、日本でも回教などと呼ばれたが、現在はあまり使われなくなった。他の宗教と異なる最大の特徴は、政教一致のウンマ(イスラーム共同体)を理想とする政体が存在すること、クルアーン(コーラン)やシャリーア(イスラーム法)で規定されるムスリムが守らなければならない戒律・教義(六信五行)が現在でも形骸化していないことである。またイスラームは、宗教教義がムスリムの日常生活の隅々にまで行き渡っており、政治・経済・法律・倫理・都市建築などもイスラームの教えによって規定される。
② イスラーム文化圏
世界宗教であるイスラームは、西アジア、アフリカ、インド亜大陸、中央アジア、東南アジア、中国西域を中心に約13~14億の信者が存在し、世界で2番目に多くの信者を抱え、それに伴う宗教文化を築いている。シルクロードの民族で見てきたように、アラブ系のみならず、テュルク系、イラン系など幅広い民族に信奉されている。その大部分がスンナ派で、約1割がシーア派に属する。
③ イスラームの教典
◆クルアーン(コーラン)
アラビア語で書かれたイスラームの根本聖典。預言者ムハンマドの受けた啓示の内容が口承により伝えられ、後に集録されたものである。114章よりなり、神(アッラーフ)が一人称で語った言葉として「読誦されるもの」である。預言者とは、神の言葉を預る者という意味で、最初の啓示は610年、ムハンマド40歳のとき、マッカ(メッカ)近郊のヒラー山の洞窟で下されたと伝えられる (第96章「凝血」) 。啓示は天使ジブリール(大天使ガブリエルのこと)を通じてムハンマドに召命されたといわれる。クルアーンの編纂は、初代カリフ(正確にはハリーファ/継承者、代理者)のアブー・バクル(632-634)に第2代カリフのウマル(634-644)が申し入れ、ムハンマドの書記を勤めた経験のあるザイドが収集、7世紀中頃、第3代カリフのウスマーン(644-656)がムハンマドの出身部族であるクライシュ族の言葉で統一編纂したといわれている。
◆ハディース
ハディースとは「伝承」を意味するアラビア語で、ムハンマドの言行 (スンナ) に関する伝承を指す。ムスリムの体得すべき模範的生き方を示唆するもので、一種の慣習法として、宗教・倫理,法慣行における判断の基準となり、クルアーンに次ぐ教典となっている。
④ イスラームの教義と慣習
◆六信五行
ムスリムは正しい信仰が行為によって具体的に表現されなければならない。その信仰の内容と行為のうち、とくに神への奉仕に関わるものを簡潔な箇条としたものが、「六信五行」である。
「六信」とは
六神とは、神(アッラーフ) ・天使(マラーイカ) ・啓典(クトゥブ) ・使徒(ルスル) ・来世(アーヒラ) ・定命(カダル)を受け入れることで、10世紀の後半に成立したと考えられている。
「五行」とは
また、「五行」とはイスラームの信仰を支える五本の柱で、「五柱」ともいわれ、ムスリムの行うべき行為が示されている。
こちらは8世紀初めの成立といわれている。
1.信仰告白(シャハーダ)
『ラー・イラーハ・イッラッラー。ワ・ムハンマド・ラスールッラー。(アッラーフの他に神はなし。ムハンマドはアッラーフの使徒である。)』とアラビア語で唱えること。
2..礼拝(サラート)
神への服従と感謝の念の行為による表明。夜明け、正午、午後、日没、夜半の1日5回の礼拝がムスリムには義務づけられている。他にイスラームの祝祭日である金曜日のモスクでの集団礼拝や自発的礼拝が推奨されている。礼拝にあたっては、身を淨め、意図を明らかにし、アル・キブラ(マッカの方角)に向かい、低頭平伏するが、その基本動作も定められている。
3.喜捨(ザカート)
ザカートの原義は「淨め」であり、ムスリムは貧しい人や困っている人々に供するため一定の割合の富の分配を行わなければならない。救貧税とも呼ばれていた一種の財産税で、通常年俸の2.5%程度といわれる。
4.断食(サウム)
ムスリムは、ラマダーン月の1カ月間は日の出から日没まで一切の飲食を禁じられている。但し、子供、病人、旅行者などは免除される。これはユダヤ教徒の制度を引き継いだものといわれる。
5.巡礼(ハッジュ)
ムスリムは可能であれば(ゆとりがあれば)、存命中に少なくとも1回は聖地マッカ(メッカ)へ巡礼することが義務づけられている。これは第12月の巡礼月(ズー・アルヒッジャ)の7-13日までの間に定められた方法によって集団で行う。白衣(イフラーム)を着用したムスリムの集団が神の館であるカアバを反時計廻りに7回まわる光景はよく知られている。このハッジュに対して、個人で任意に行う参詣はウムラと呼ばれる。また、ジャーラと呼ばれる墓廟などへの参詣も巡礼と訳されることがある。
聖戦(ジハード)
五行以外にクルアーンでも重要視されている行為としてジハードがある。この意味は「定まった目的のための努力」であり、イスラーム世界の拡大あるいは防衛のための戦いを指す。ジハードでの戦死者は殉教者(シャヒード)として天国が約束されている。
◆禁忌 ハラーム
イスラーム法では行為は5範疇に分けられ、そのうち禁止されるものはハラームと呼ばれている。これにもランクがあり、罰せられるわけではないが慣習として注目に値するものとして、豚肉を食べることに対する禁忌が挙げられる。これは、肉に限らず、豚骨のスープやゼラチンも同様で、ムスリムは一切これを口にしない。これらはハラームとなり、逆の言葉がハラールで、ハラール食品なら安心して食することができる。また地域にもよるが、鱗の無い魚も敬遠される。これにはイカやタコ、貝、エビ、カニが含まれることもある。イスラーム圏では、飲酒は罰せられるハラームである。
◆偶像崇拝の禁止
イスラームは偶像崇拝を厳しく戒めている。創造主である神以外には生き物を生み出すことはできず、被造物である偶像を崇拝することは許されない。自ずと絵画、彫刻のような造形芸術は発達しなかった。イスラーム圏ではミニアチュール(細密画)と呼ばれる絵画芸術が存在する。これは宮廷などの私的な所有として容認されていたといわれるが、公共的な場所においては一切の図像表現は忌避されている。モスクやクルアーンの装丁などには、もっぱら幾何学的な文様か、あるいは様式化された植物文様などの装飾表現しか存在しない。これらのことはスンナ派においては厳格であるが、シーア派であるイランなどでは比較的寛容なところがあり、さまざまな場所に図像表現や写実的表現をしばしば見受けることがある。
⑤ スンナ派とシーア派
イスラームの大勢を占めるのがスンナ派である。スンニー派ともいう。正確には「スンナと共同体の民」といわれ、イスラーム共同体が全体として受け入れてきた預言者のスンナ(慣行・範例)に従う人を指している。そのためハディースを重要視している。一方シーア派とは「シーア・アリー」すなわち「アリーの党派」と呼ばれていたものが、シーアとのみ表されるようになり「シーア派」となった。文字通り預言者ムハンマドの血を引き継ぐ、従弟であり女婿であるアリーを標榜する党派である。
スンナ派が共同体の総意を理念とするのに対して、シーア派はイマームという個人に対する絶対的帰依を原則とする。シーア派の中の大勢を占める十二イマーム派は、初代イマームのアリーから12代の隠れイマームといわれるホッジャットまでの12人のイマームを宗教的霊的最高指導者とする宗派で、イランではサファヴィー朝以来の国教となっている。スンナ派は、ハナフィー派、マーリク派、シャーフィイー派、ハンバル派の四法学派があり、シーア派は、十二イマーム派のほかに、イスマーイール派、ザイド派、カルマト派、ヌサイリー派、ニザール派などがある。
⑥ イスラームの聖地
◆マッカ(メッカ) Makka
預言者ムハンマドの生誕地、カアバのあるイスラームの聖地である。610年ムハンマドが最初にアッラーフの啓示を受けた地でもある。
◆マディーナ(メディナ) al-Madina
ムハンマドの墓廟があり、それを含む預言者のモスクがある。622年、マッカからのヒジュラ(聖遷)により布教の拠点とした地。マッカとともにイスラームの「二聖都」と称される。
◆イェルサレム al-Quds
ユダヤ教、キリスト教、イスラームの共通の聖地。マッカ以前のキブラであり、ミーラージュ(ムハンマドの昇天)の場所である「岩のドーム」がある。
以上がイスラーム全体の聖地であるが、シーア派の聖地としては、ナジャフ、カルバラー、マシュハドなどがある。
⑦ イスラームの装飾
イスラームの偶像崇拝の禁止については、先に述べたが、この図像表現に代わる装飾文様の発達がイスラーム芸術の大きな特徴である。当然、これらのことは絨毯の文様にも大きく影響を与えている。イスラームの要素として絨毯の意匠に反映される項目を以下に列挙しておく。
◆アラベスク
アラベスクとはアラビア風という意味だが、様式化されたあるいは抽象化された草花文が反復的、連続的に展開されるパターンを指している。広い意味ではさまざまな多角形を用いた幾何学文様の終わりなき反復もアラベスクであり、これは神の無限性を象徴しているといわれる。
◆楽園
クルアーンには、この世において信仰し善行を積んだ人がその報いとして住むことを許される楽園(ジャンナ)の記述が頻出する。滾々と流れる河水、緑したたる木陰で、麗しい乙女に傅かれ、欲しいものは何でもあるという彼岸である。絨毯に見られる庭園文や、樹木文、樹木動物文などは楽園の表現と考えられている。
◆ミヒラーブ/メヘラーブ
モスクの礼拝室で、聖地マッカに面する内壁中央に設けられたアーチ形の壁龕(へきがん/ニッチ)をミヒラーブと呼ぶ。このアーチの形状をもつ絨毯はミヒラーブ絨毯と呼ばれ、いわゆる礼拝用絨毯とされている。ムスリムはどこでもこの礼拝用絨毯のアーチの先端がアル・キブラ(向かう方角、すなわちマッカの方角)に向かうように敷き、その上で礼拝することができる。このミヒラーブ文は絨毯に方向性を与えるものである。部族民の幾何学的な意匠に凸形のものがあるが、これもミヒラーブ文であり、それが双方向となったダブル・ミヒラーブなどもある。また、このミヒラーブがいくつも並んだ意匠はサッフと呼ばれている。
◆カリグラフィー
アラビア文字はクルアーンの言葉を記すための文字であり、神聖なものであると同時に美しいものであると考えられている。アラビア文字、とくにクーフィー体は初期クルアーンやモスクの装飾にも用いられている。文字が芸術となるのは、漢字文化圏とアラビア文字文化圏のみである。アラビア文字も数多くの書体があり、文字そのものの装飾性を重要視しており、その表現は絨毯の中にも数多く見受けることができる。装飾枠であるカルトゥーシュの中にクルアーンの章句や詩の一部を織り込んだものも多い。また、祇園の絨毯にはボーダーにアラビア文字を抽象化したデザインのものも残っている。
このように絨毯がイスラーム芸術を代表するものとして現存する以上、絨毯の装飾を考えるにあたって、常にイスラームという異文化が背景にあることを理解しなければならない。
カーペット・ベルトがシルクロードとオーヴァラップするように、イスラーム世界にも包含されていることはすでに述べた。しかし、それは地勢的な必然性があるわけではない。ここでは一応イスラームの基礎知識を含め、絨毯とイスラームの関係性について触れておく。