羊の史話
羊と人間の共存は古く、ざっと1万年ほど前に遡るとされています。旧約聖書の『創世記』のなかでも、アダムとイヴの二人の息子、カインとアベルにまつわる羊との関連が述べられています。それは、アベルは羊を牧う者、カインは土を耕す者で、神(ヤハウェ)は弟アベルが捧げた羊を「良し」とし、人類の悲劇が、そこから始ったという因縁が語られています。思えば聖書には羊飼いに関連した逸話が数多く見られます。神の導きを説く「迷える子羊」という字句なども、そのひとつです。
古代バビロニアは、ハンムラビ王時代(前1792-前1750)には採毛用と食肉用の羊がすでに飼育され、「羊毛の国」の語源ともなったといわれています。また貴重であった羊は、地中海世界へと伝わり、ギリシアで「黄金の羊」伝説を生み出しています。神への犠牲である羊や生業であった牧羊にまつわる話は、ユダヤ教、キリスト教、イスラームに頻繁に語られるとともに、東洋でも羊という漢字から導き出されるエピソードには事欠かきません。
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