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PERSIAN CARPET

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ペルシア絨毯情報

◆ケルマーン(ケルマン) KERMAN

イラン高原南東部、キャヴィール砂漠の南、ルート砂漠の西に位置するケルマーンは、3世紀サーサーン朝ペルシアのアルダシールⅠ世によって建設されたといわれている。インドへのルートの中継点にあたり、昔から侵略と虐殺の凄惨な歴史を歩んできた町でもある。作物の望めない不毛の地で、古くから織物や刺繍が発達した。マルコポーロもここを通過し、美しいショールや刺繍を絶賛している。絨毯づくりの伝統も長く、サファヴィー期のサングスコ絨毯や花瓶文絨毯など名品も数多く生み出している。19世紀末、それまで隆盛を誇っていたショール産業が衰退する頃、絨毯産業への転換がはかられ、絨毯需要の急増からイランでも屈指の絨毯産地に発展した。20世紀前半にはイギリスやアメリカの絨毯会社がオフィスをもち、歴史上の人物を織り込んだポートレイト絨毯や肖像絨毯、無地グラウンドのメダリオンをもつアメリカン・ケルマーン、ショール時代を彷彿させる花文様の絨毯が数多くつくられた。ケルマーン独特の緻密で美しい伝統的絨毯は、ケルマーンとその北にあるラーヴァル村を中心につくられてきた。

●ラーヴァル(ラヴァー) RAVAR

19世紀の初め、ザンド朝最後の王ロトゥフ=アリー・ハーンが、アーガー・モハンマド( ガージャール朝初代の王)の追撃軍に追われ、シーラーズからケルマーンに逃亡したが捕らわれ、ケルマーンの住民2万人ともども目を潰されたという。こうしてザンド朝は消滅したが、この残虐行為から逃れるために、ケルマーンの住民の多くが約140km北のラーヴァル村へ逃避したといわれる。この時、腕のいい織り手がラーヴァルに移り住んだため、ケルマーン・ラーヴァルに良質の絨毯づくりの技術が伝わったという説がある、その真偽の程は不明だが、ケルマーンの良品の多くが、このラーヴァル村で制作されてきたため、ラーヴァル(ラヴァー、ラバー)= ケルマーンの良品を指す言葉として定着。今日では、商標のように用いられている。

◆シーラーズ(シラーズ) SHIRAZ

ファールス州の州都であるシーラーズは、南ペルシア最大の街である。ペルセポリスやパーサールガードなどハカーマネシュ朝の中心地にも近く、街にはエラム庭園やハーフェズ、サアディーの廟もあり、詩とバラの街と呼ばれる。この街は18世紀ザンド朝の都となり、さまざまな施設が建設された。キャリーム・ハーンは、自らシャー(王)を名乗らず、ヴァキール(代理人)であろうとした明主であった。バーザーレ・ヴァキール、マスジェデ・ヴァキールなど、その名が残る。シーラーズは、近隣で織られる絨毯の集積地である。ここには定住化したガシュガーイー族の絨毯も集まり、ガシュガーイーあるいはシーラーズの絨毯として市場へ出回る。

◆ヤズド YAZD

ヤズドは中央ペルシアに含められることが多いが、ケルマーンとの繋がりで南ペルシアに分類した。ヤズドは、キャヴィール砂漠の南端に横たわる町である。マシュハドやゴムがシーア派モスリムの地ならば、ヤズドはゾロアスター信奉者たちの地である。沈黙の塔は、かつては死者を鳥に委ねるゾロアスター教徒の一風変わった壮大な墓地であった。この町は3千年以上の歴史を有し、イランで最も高いメナーレのある金曜モスクや3階建てのバーザール複合施設などもある。ヤズドは、サファヴィー朝の絨毯工房もあり、ブロケイドや絹が何世紀にもわたってつくられるなど、染織産業の盛んなところである。今つくられている絨毯は、幾何学文様のメダリオンや花文様絨毯などローカル産地の趣きのものである。

◆タバス  Tabas

ダシュテ・キャヴィール(キャヴィール砂漠)とキャヴィーレ・ルート(ルート砂漠)の間にぽつんと置かれたオアシス都市タバス。距離を隔てるがここはヤズド州に含まれる。近年タバスは、ナーイーン絨毯のコピーを数多く産する絨毯産地として知られるようになった。デザインのほとんどはナーイーンのメダリオン文様を模したもので、経糸と緯糸に綿、パイルにウール、場合によって絹のアクセントを使った左右非均等結びで織られているあたりはナーイーンと同様だが、上質な織りで定評のあるナーイーンに比べ、太い糸を用いた粗い織りのものが多く、ナーイーンの格安品として取り扱われることもある。

◆アルダカーン(アルダカン)  Ardakan

アルダカーンは、イラン中央部ヤズドの北西60キロメートルにある砂漠の中のオアシス都市である。この町はラクダが名物で、ガナートによる灌漑システムの恩恵でこのあたりの農業センターとなっている。近年アルダカーンは、伝統的な絨毯産地として定評のあるカーシャーン絨毯のコピー産地として知られるようになった。カーシャーンの一般品としてよく見られる、典型的な菱形メダリオンの絨毯やアフシャーン絨毯を模したものを中心に数多くのコピー絨毯がつくられおり、最近ではナーイーンのコピー商品も生産する。

◆アーバーデ(アバデ) Abadeh

エスファハーンからシーラーズへのルート上にあり、定住化したガシュガーイー族が地機で綿組織の都市の絨毯のような意匠のものを織っている。

◆スィールジャーン(シルジャン) Sirjan

ケルマーンの南西に位置し、かつてサイードアーバードと呼ばれていた。アフシャール族の絨毯がこの地を経由してケルマーンに送られている。

 

南ペルシア
ケルマーン
ラーヴァル
シーラーズ 
ヤズド
タバス
アルダカーン
アーバーデ
スィールジャーン

ペルシャ絨毯の主要産地

南ペルシャの絨毯産地

イラン中央部からは離れた辺境地域ですが、古くからの絨毯づくりの伝統をもつケルマーンやガシュガーイー、アフシャールなどの遊牧・部族民絨毯が集まる街や村(集散地)が点在しています。

南ペルシアの主要な絨毯産地とその沿革

イランには絨毯の産地が数多く存在し、産地名を冠して個別の絨毯の商品名のような役割を果たしています。産地の名でひとつのイメージが形成されるほど、流通上大きなウェイトがあり、主要な都市はもちろん、専門的には小さな町や村の名さえ、取引上のバロメーターとして扱われてきました。ペルシア絨毯の品質評価や取引価格に大きな影響を与えてきた…これら数多くの絨毯産地の中から南ペルシアの主要な絨毯産地について解説します。

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商品名/シラーズ・ガシュガーイー・ピクトリアル絨毯

生産地/イラン・シラーズ

製作年代/1994年もしくは1995年

サイズ/218x149㎝ 

パイル/ウール 

縦糸/ウール

織り密度/1㎝角に3×3=9kn(ノット) 

計算上の総ノット数/294,573kn

※knとはknot(ノット=結び)の略

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